残された人たちが揉めないためにも、先立つ人は、遺言書を作ってしっかり準備してあげておくといいわね。
だから、しっかり理解したうえで作成しないとね!
遺言は誰でも残せるわけではない
そもそも、遺言というのは、誰でもできるものではありません。
民法の第960条以降に「遺言」についての記載がありますが、そこを見ると、遺言ができる人というのは、15歳以上であり(第961条)、かつ遺言をする時点でその能力を有する者(第963条)に限られています。
一般的に、遺言能力があるというのは、自分の財産や身分関係等を理解し、自分自身の意思で財産をどのように相続させようか判断する能力があることを言います。
逆に15歳未満の子供は一般的にそこまでの判断能力がないから、有無を言わさず遺言が作れないんだね。
認知症になってから作成した遺言書は無効になる
判断能力がないと遺言を遺せないということは、認知症の方は基本的には遺言が作成できないということになります。
認知症というのは、脳に障害が起こり、記憶や認知機能、判断能力などが低下してしまうものです。
認知症の方が、自分の財産の把握や、その分け方について正確な判断ができると思いますか?
難しいですよね?
ですから、基本的には、認知症になってしまうと遺言書の作成は難しいんです。
まれに、認知症で遺言能力のない方が、遺言書を遺してしまうケースがあります。これというのは、認知症になってしまった後に、子ども等の推定相続人の中の1人が、自分に有利な遺言書を作らせようとするために起こることがほとんどです。
基本的に認知症の人は遺言を作成できないはずなのですが、推定相続人がうまいこと準備をして、公証役場に本人を連れていき、作成してしまうことがあるのです。
これでは、認知症であっても遺言が作れるように思われる人もいるかと思いますが、そうではありません。
遺言能力がないのに作成された遺言というのは、相続発生後であっても無効となる可能性が非常に高いのです。
上記のようなケースでは、おそらくほかの相続人の人が疑問に思いますよね?そして、訴訟などの法的手続きに進むのです。
実際に、遺言書が裁判所により無効とされた事例は数多く存在しています。
認知症になってからでは遅いのです。
遺言を遺したいという思いがあるのであれば、元気なうちに作成することが大事です。
遺言書作成前に病院で診察を受けましょう
認知症になってしまってからでは、遺言書は作れないというお話をしてきましたが、初期段階ではまだあきらめるのは早いかもしれません。
ちょっと物忘れが増えたかな…くらいであれば、まだ遺言能力がある可能性は高いです。
認知症の疑いがある方は、遺言書を作成する前に、病院へ行き診察を受けることが大事です。
医師に診てもらい、遺言能力があると診察されれば、問題なく遺言書を遺すことができます。また、相続発生後に、他の相続人から指摘を受けたとしても、医師の診断書があれば、遺言書の効力は無効とは言えなくなるはずです。
さらに、医師に診察してもらうことでどの程度の認知能力、判断能力があるのかといったことについてもわかります。仮に財産を細かく分けるような難しい遺言書は残せないとしても、簡単な内容のものであれば、作成できる可能性(有効と判断される可能性)もあります。
遺言作成時の認知・判断能力がどうであったのか。
これこそが、残された遺言書の効力を判断するカギになってきます。
せっかく遺す遺言書が、無効になるのは避けたいですよね。だからこそ、遺言書を作成する前には病院へ行くようにしましょう。
遺言書はどのように作成したらいい?
認知症と診断される前に、自分の財産をしっかり把握して、遺言書を作成しておくことが大事ということですが、肝心の遺言書はどのように作成したらいいのでしょうか。
遺言書には大きく分けて2つの種類があります。
1つは自筆証書遺言と言われ、その名の通り本人が直筆で文章を書いたものです。簡単に言うと、お手紙のようなものなのですが、一応書き方のルールもあります。
そしてもう1つは、公正証書遺言というもので、公証人に関与してもらって作成する遺言書です。
公正証書遺言は公証役場で作成・保管されるので、自筆証書に比べて「キチンとしたもの」という印象が強いです。なので、遺言が無効になる確率は自筆証書に比べると非常に低いです。
とはいえ、どちらにもメリット・デメリットはありますので、よく理解したうえでどちらかを選ぶことをおすすめします。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについてもっと知りたいという方は、こちらの記事も読んでみてください。
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遺言書は認知症になる前に作成を
遠い将来、自分の子供たちが、自分の財産をきっかけに揉めて仲違いする姿なんて誰も見たくないですよね?
たしかに、遺言書があっても、揉めるケースも世の中にはあります。でも、遺言書がないよりは揉めない可能性が格段に上がることは間違いありません。
だからこそ、遺言書は残しておきたいものです。
たいていの人は、もっと歳をとったら遺言書を用意しよう…と考えているうちに、いつのまにか認知症になってしまっているのではないでしょうか。
先延ばしにしていると、気付いた時にはもう手遅れかもしれません。
思いついた今こそ、遺言書の作成を行うべきなのではないでしょうか。