「太陽の光を浴びると元気になる」とか、「健康法として日光浴がいい」なんて聞いたことがありませんか?
果たして、これって本当なのでしょうか。
なんとなく、陽に当たったら、暗いところにいるより明るい気持ちになるから、そう言ってるだけなんじゃないかな?と思ったりもするのですが、昔からこう言われているということは、何かしらの根拠があるはず…。
また、認知症予防にも効果があるという噂もあったりなかったり。。
もし本当に認知症予防に効果が期待できるならば、こんな簡単な予防法を試してみない手はないですよね!
気になる真実はいかに…。さっそく見ていきましょう!
太陽光がもたらす身体への影響とは
そもそも太陽の光を浴びると、紫外線を吸収して身体によくないとも言われていますよね。
実際、太陽の光(紫外線)は、人間の身体に良い影響と悪い影響のどちらも与えます。
太陽の光とともに放出される紫外線は、日焼けやシワ・シミを作るだけでなく、白内障や皮膚がん等の病気にも影響していると言われています。
(※環境省HPより 紫外線環境保健マニュアル )
しかし、紫外線は人間にとって必要不可欠な存在でもあるのです。
人間は、紫外線を浴びると体内でビタミンDを生成します。ビタミンDは、腸内でのカルシウムの吸収を2~5倍に促進させ、骨を丈夫にする働きがあります。カルシウムをきちんと摂取していても、ビタミンDが不足していると、吸収することができず、カルシウム不足が生じてしまいます。
とはいえ、前述のとおり紫外線は体に悪影響も及ぼしますので、ビタミンDは太陽以外のもので補えないものかと考えましたが、なかなかそれは難しいようです。
そもそも、ビタミンDは、食品から摂取するか、太陽光に当たって自ら生成するかの2択しかないのですが、食品からの摂取では、人間が1日に必要とする量の半分を摂取することすら難しいと言われています。
ちなみに近年では、若い女性は特に日焼けを避ける傾向にあるため、乳幼児のビタミンD不足が問題となっています。母乳から栄養を摂る赤ちゃんには、親のビタミンD不足が直接影響を与えてしまうんですね…。
太陽光(紫外線の)良い面と悪い面を両方きちんと理解したうえで、太陽光とうまく付き合っていく必要がありそうです。
太陽の光を浴びる時間は?何時でもOK?
さて、太陽は日の出から日暮れまで少なくとも10時間くらいは私たちを照らしてくれていますが、太陽光に当たる時間はどれくらいだったら健康的と言えるのでしょうか。また太陽に当たる時間は何時でもいいのでしょうか。
厚生労働省によると、ビタミンDの1日の平均摂取推奨量は、以下の通りです。
ビタミンDの1日の平均摂取推奨量 | |
ライフステージ | 摂取推奨量 |
生後12ヵ月 | 400IU (10μg) |
小児1~13歳 | 600IU(15μg) |
10歳代14~18歳 | 600IU(15μg) |
成人19~70歳 | 600IU(15μg) |
成人71歳以上 | 800IU(20μg) |
妊婦及び授乳婦 | 600IU(15μg) |
(厚生労働省「統合医療」情報発信サイト:ビタミンDの1日の平均摂取推奨量)
この必要摂取量のうち、食事による摂取基準量は平均約5.5μg/日 と、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会報告書」で、公表されています。(※年齢によって多少数値に前後がありますので、詳細は上記報告書にてご確認下さい。)
そうしますと、食事により摂取できない約5~15μg/日 のビタミンDについては、太陽光より摂取する必要性が出てきます。
では、これだけのビタミンDを太陽光から摂取するには、どれくらいの時間、太陽の光を浴びたらいいのでしょうか。
環境省の紫外線環境保健マニュアルにも書いてありますが、太陽光を浴びるべき時間は、地域や季節、時刻、天候、服装、皮膚色など多くの要因により左右されるので、何分と明言することは難しいのです。
ただし、参考になる資料として、国立環境研究所と東京家政大学の研究チームの研究結果があります。研究内容については、5.5μgのビタミンDを生成するのに必要な日光浴の時間を、日本の3地点(札幌、つくば、那覇)において計測してくれています。
簡単に結果をまとめると、夏季の正午ではどの地点でも5分未満、冬季の正午であれば、札幌で約76分、那覇では約7.5分と大きな差が出ました。
あくまでも参考ではありますが、この結果を踏まえて、自分のいる地域では、どれくらいの時間太陽に当たるのが健康的なのか、一度考えてみるといいと思います。
なお、太陽光に当たる時間帯ですが、一般的に正午前後(午前9時から午後3時まで)は、日差しが強い時間帯ですので、この時間帯は避けたほうが無難かと思われます。
太陽の光を浴びるだけで認知症は予防されるのか?
ここからが一番気になるところ。
「太陽の光を浴びることが認知症予防にもつながるのか」ということについて確認していきたいと思います。
米国の神経学専門雑誌Neurologyを見たところ、ビタミンDと認知機能の関係性に関する記事を見つけました。
特に興味深いものが、2014年に紹介された研究です。認知症ではなかった65歳以上の1,658人について、ビタミンDの数値を測定したのですが、6年後に認知症になってしまった人と正常な人のビタミンDの数値を比較したところ、ビタミンDの数値が低い人は認知症発症リスクが53%高く、その中でも特に数値の低いの人については、125%も認知症のリスクが増えたという結果が出たというのです。
(参考文献:※1)
また、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学先行の佐藤謙一郎大学院生及び岩田淳講師によって、日本人の軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行には、血液中のカルシウム値が低いことが関連することが発表されました。
(参考文献:※2)
海外においても日本においても認知症とビタミンDの関係については研究がされていて、どれも結果がでています。
ビタミンDを生成するのに欠かせない太陽光。
やはり、太陽光を浴びることは認知症の予防につながるといえそうですね。
まとめ
太陽の光には大きな力があるんですね!
冒頭に言った、明るい日差しに当たると、なんとなく気持ちが明るくなる…なんて言うことも、もしかしたら一理あるのかもしれませんが、科学的にも太陽光を浴びることは健康に良いと証明されていたのですね。
昔から「太陽の光に当たることは大事」と言われてきたことにも納得です。
そして、太陽の光を浴びるだけで認知症予防にも効果的だなんて、本当に驚きですよね。
さっそく今日から日光浴を始めたいと思います(笑)
とはいえ!紫外線は身体に良いだけではないということも忘れてはいけません。
長時間の日光浴はかえって身体に良くありません。
適度な時間を心がけて、太陽の光を浴びるようにしましょう。
<参考文献>
※1
Vitamin D and the risk of dementia and Alzheimer disease