遺言書の種類から、忘れましたさんにおすすめの遺言書まで、一つずつ説明していきますから、安心してください!
目次
遺言書は1種類だけじゃない。遺言書の種類について
「遺言書」と聞いても、遺言書の種類を思い浮かべる方は少ないのではないでしょうか。
遺言書は遺言書であって、それ以上でもそれ以下でもないといった感じ…とでも言いますか、特別種類分けされてるものだという認識をされている方は少ないと思います。
遺言書には大きく分けて2つの種類のものがあります。
1つは「公正証書遺言」、2つ目は「自筆証書遺言」というものです。
言葉から何となく違いを想像できるかもしれませんが、この二つの遺言書について、それぞれがどういうものでどのような違いがあるのか、比較してみましょう。
公正証書遺言と自筆証書遺言の違いを徹底比較!
それでは、公正証書遺言と自筆証書遺言にはどのような違いがあるのか、いくつかの項目ごとに表にまとめてみました。
公正証書遺言 | 自筆証書遺言 | |
作成方法 | 内容を公証人に伝える | 自分で書く |
必要なもの | 実印、印鑑証明書、相続人との続柄のわかる戸籍謄本など | 紙とペンと印鑑 |
作成場所 | 公証役場 | 自宅(どこでも可) |
立会人(証人) | 必要(2人) | 不要 |
完成までの時間 | 数日 | すぐ |
費用 | 有料(作成手数料、証人の日当等) | 無料 |
保管場所 | 公証役場 | 自宅(自分で保管する) |
どうでしょうか。
パッと見ただけでも、同じ回答がないということに気づきますよね。同じ遺言書でありながら、作り方は全く違うものということがわかります。
また、表には書ききれませんでしたが、公正証書遺言の場合、不動産があるなら登記簿謄本が必要だったり、相続人以外の人に遺贈したいのであれば、その方の住民票なども用意する必要があります。また、作成手数料については、最低でも16,000円程~となるので、作成前に必ず日本公証人連合会のホームページを見て確認してください。
そして、自筆証書遺言の場合は、遺言者が自分で書くということですが、書き方にもいくつか決まりがあります。少しだけ例を挙げると、日付を明記し、署名・押印をすることや、財産が特定できるよう具体的に書く(不動産なら土地と建物に分けて、登記簿謄本に書かれている通りに記載したり、貯金であれば口座番号まできちんと明記する)必要があります。
公正証書遺言と自筆証書遺言のメリット・デメリット
メリット・デメリットと言っても、人それぞれ求めるべきポイントは違うので、一概にどうとは言えませんが、ここでは一般的にメリットやデメリットと思うであろう点を3つずつ挙げてみたいと思います。
公正証書遺言のメリット
- 無効になる可能性が低い
- 自分で保管しなくてよいので、無くす心配がない
- 文字が書けなくても作成できる
公正証書遺言のデメリット
- 費用と時間がかかる
- 書類を揃えたりする手間がかかる
- 他人に遺言の内容を知られてしまう
自筆証書遺言はどうだろう?
自筆証書遺言のメリット
- いつでもどこでも作成できる
- 誰にも内容を伝えなくてよいので、秘密にできる
- お金がかからない
自筆証書遺言のデメリット
- 紛失してしまい、見つけてもらえない可能性がある
- 書き方を間違ったら無効になる
- 相続発生後に家庭裁判所で検認が必要
公正証書遺言も自筆証書遺言もそれぞれにメリットデメリットがありますから、どちらのほうが優れているとは言えないんですね。
だからこそ、その違いをよく分かったうえで、自分に合ったものを選ぶようにしたいですね。
認知症予備軍さんには、自筆証書遺言より公正証書遺言がオススメ
さて、公正証書遺言と自筆証書遺言の違いについてここまで見てきましたが、認知症に片足踏みこみそうな人は、どちらを選ぶのがよいのでしょうか。
結論から言うと、認知症予備軍さんにおすすめなのは、公正証書遺言です。
公正証書遺言は、作成時に公証人が関与し、記載事項に不備のないように作られます。そのため、無効になる可能性は非常に低いです。
さらに、公正証書遺言を作成する際に併せて以下のことをしておくと、効力はバッチリです。
それは、遺言を作る直前に、認知症の専門医の診察を受け、認知症ではないことを確認してもらうことです。また、認知症ではないと診断されたら、必ず診断書をもらうようにして下さい。
ちなみに、公正証書遺言を作りたいけど、何からはじめたらいいかわからないという方は、司法書士や弁護士などの法律の専門家に相談するのがオススメです。
例えば、司法書士さんに依頼をすると、公証役場とのやり取りを代わりに行ってくれますし、遺言書についても意思を伝えれば、文案を作成してくれます。公証役場では遺言書の内容については相談できませんが、司法書士さんであれば相談にも乗ってくれます。
また、面倒な戸籍の収集も代行してくれる事務所さんも多いので、「多少費用をかけても、わずらわしさから解放されたい!」という方は、一度相談してみることをおすすめします。
相続・遺言問題でお悩みの方は、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。
公正証書遺言か自筆証書遺言か、自分に合った選択を
「遺言書」と言っても、公正証書遺言と自筆証書遺言では大きな違いがあることがわかりました。
そしてその2つの遺言書には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
人それぞれ置かれた環境は違います。
遺産を遺す子供たちが仲良く円満な場合もあれば、ぎくしゃくしているような場合もあるでしょうし、財産がきっちり分けられるような金融資産だけの人もいれば、分けることのできない不動産だけという人もいると思います。
公正証書遺言か、自筆証書遺言か…
自分の状況や、家族の関係性、財産の種類…
そういったものを一度すべて見直してみて、どちらの遺言書が自分に合っているのか、よく考えてみてください。
正解はありませんが、あなたに向いている遺言書はあると思います。
自分に合った遺言書を選び、自分のためにも遺される家族のためにも、元気なうちに遺言書を作っておきましょう。