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アルミニウムはアルツハイマーを引き起こすという噂の真相
おそらく誰しも一度は、アルミニウムを摂取するとアルツハイマーが引き起こされるとか、アルツハイマーになりやすいというような話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
そして、なんとなくそれが事実のような気がして、アルミニウムは避けがちな方がたくさんいると思います。
でも、この話の真相ってどうなんでしょうか?
もしこの話がただの噂だったら…そう考えた人はいますか?
一時、アルミニウムとアルツハイマーには因果関係があると話題になったことがありました。その一つの原因としては、透析治療中の患者さんが透析液に含まれるアルミニウムを体外へ排出することができず、それが脳に蓄積され認知症を発症(これを透析脳症と言います)したことがあったからと言われています。
アルミニウムを含め金属類というのは、脳細胞に対して毒性があります。ですから、腎臓機能に障害があり、上手くアルミニウムを排出できない人だと、脳に障害が出てしまうのです。(※以下でお話しますが、基本的に健康体の人は、アルミニウムは吸収せずに排出します。)
ですが、これはあくまでも透析脳症と呼ばれるもので、アルツハイマーとは症状も病理プロセスも異なります。(ちなみに現在では、透析液は改善され、透析脳症の発症の心配はないと言われています。)
そのため、アルミニウムとアルツハイマーに因果関係があるとは、短絡的には言えないのです。
また、厚生労働省のホームページにも記載されていますが、現在までの研究で、アルミニウムとアルツハイマー型認知症の因果関係を証明する根拠は出ていません。
(参照:厚生労働省 アルミニウムに関する情報)
アルミニウムは安全?アルツハイマー以外での身体への影響
そもそもアルミニウムは、土壌や水、空気の中に存在している物質です。もちろん農作物や海産物にも土や水を通して、微量ではありますが、アルミニウムが含まれています。
これはすなわち、わたしたちの生活において、アルミニウムを排除することは不可能だということを意味しています。
では、思い返してみてください。少なからず誰もがアルミニウムを日常的に摂取していますが、それを理由に健康への被害を訴えた人はいるでしょうか?いませんよね?
というのも、人間は摂取したアルミニウムのほとんど(約99%)を、吸収せずにそのまま排出してしまいます。また、残った部分(約0.5~2%)についても、そのほとんどを腎臓を通した後に尿として体外へ排出します。
ですから、基本的には、過度に摂取しない限り、アルミニウムが体内へ蓄積されるということはないのです。
では、アルミニウムを過剰に摂取してしまった場合、身体にはどんな影響があるのでしょうか。
ラットを用いた実験結果によると、アルミニウムを多量に投与した場合、腎臓や膀胱への影響や握力の低下が確認されたと言われています。
また、マウスでは、アルミニウムを投与した個体には特に異常は見られなかったようですが、第2・3世代において、食べ物の摂取量が低下し、体重の増加に遅延が見られたそうです。
とはいえ、動物の種類やその個体により影響の受け方に差があるようで、すべての動物において上記の症状が出るとは言えません。また、様々な実験結果を見ても、ほとんど異常が見られないことのほうが多いように見受けられます。
アルミニウムが危険と言われるのは、摂取量の問題
アルミニウムが原因で身体に影響が出るとしたら、それは多量に摂取した場合ということですが、どの程度なら安全で、どれくらい摂取したら危険となるのでしょうか。
JECFAという食品の安全性を評価している国際機関(FAOとWHOの合同食品添加物専門家会議)では、耐容週間摂取量は1~2㎎/kg/週としています。
ちなみに、耐容週間摂取量というのは、一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される1週間当たりの摂取量のことです。
また、数々の動物実験の結果から計算すると、人間の1日あたりの許容摂取量は、推定100~200μg/kgとなるそうです。
(参考文献:アルミニウム化合物の生体に対する影響)
しかし、実際のところ、人間はもっと多量のアルミニウムを摂取しても影響が出ていないと言われています。
アルミニウムは消化器薬としてよく用いられているのですが、実際そのような薬剤を毎日摂取(アルミニウムにして1日あたり10~30㎎/kg)したとしても、アルミニウムによる症状は出ていません。
人間はほかの動物に比べると、アルミニウムに関して非常に鈍感で、影響を受けにくいようです。そのため、仮に許容摂取量を多少上回るようなアルミニウムを摂取したとしても、健康な人であれば、何の問題も生じないと言われているようです。
ちなみに、、日常生活において、野菜や加工食品からどのくらいアルミニウムを摂取しているかというと、どの年代においても耐容週間摂取量を下回る程度とのことです。いちばん摂取量が多い年代は1~6歳とのことですが、その年代でも許容量の約43%という結果が出ています。
アルツハイマーの予防には、アルミニウムを気にするよりもバランスの良い食事を心がけるべし!
現時点で、アルミニウムとアルツハイマーを結び付ける根拠は特に見つかっていません。毒性学的にも、アルミニウムがアルツハイマーの原因だと言える結果はほとんどないうえ、否定的な証拠が多いと言います。
とはいえ、動物実験において、過剰にアルミニウムを投与した場合には、多少なりとも健康への影響が出ていることも事実ですし、透析に含まれるアルミニウムにより、脳に障害が出た事実も否定できません。
そういうことを鑑みると、アルミニウムとアルツハイマーに因果関係はないにしても、やはり、アルミニウムの過剰摂取は控えたいところです。
ただ、アルミニウムだけに対して特別に拒絶反応を示す必要もないとは思います。
どんなものでも過剰に摂取すれば、身体に良い影響をもたらさないことは、皆さんもよくわかっていると思います。
「アルミニウム」の使用に対して神経質になるよりも、バランスの良い食生活を送ることのほうがよほどアルツハイマーの予防には効果的と言えます。
バランスの良い食事をとることで、身体が健康でいられますから、脳にも良い影響をもたらします。また、加工品に頼らない食生活になれば、アルミニウムを豊富に含む食品添加物を自然と避けることも可能です。
アルミ鍋の使用やアルミホイルの使用を控えることもいいとは思いますが、そういったことに敏感になるよりも、加工品ばかりでなく、自然の農作物をおいしくバランスよく食べることのほうが、身体にも脳にも良い結果をもたらすのではないでしょうか。